ファクタリングの
賢い使い方
企業経営をしている中で、急な資金調達に迫られる場面があります。その際に役立つ資金調達の方法の1つが「ファクタリング」です。
「売上はあるのに入金が遅い」「融資実行まで時間がかかる」といった一過的な資金ショートのケースでは有効な手段といえます。しかし、ファクタリングはどの企業にも勧められる手段ではありません。慢性的な赤字を穴埋めする目的で継続的に利用すると、かえって資金繰りが悪化してしまうことがあります。
そのため、財務状況を踏まえつつ、目的・必要額・出口対策をよく検討したうえで利用を決めることが重要です。
今、ファクタリングの「使い方」が重要な理由
昨今、利益は出ていながらも、手元資金が減少している企業が少なくありません。その主な要因としては、「物価高」「人手不足」「金利上昇」などがあります。
また、2026年1月から施行された取適法(中小受託取引適正化法)では、対象となる中小受託取引において手形による支払いが原則禁止となり、現金による支払いが基本とされました。そのため、「売掛債権」をどう資金化するかが、実務的なテーマとして以前よりいっそうクローズアップされています。
物価高・人手不足・金利上昇で「黒字でも資金不足」が起きやすい
原材料やエネルギー価格が上昇すると、販売価格への転嫁が追いつかない一方で、仕入れは値上げ後の価格で行う必要があります。その結果、想定よりも手元資金が減少してしまうことがあります。
また、人手不足解消のために必要な人件費や採用コストなどは現金で支払われるため、手元資金が減少してしまいます。そのほか、企業の借入金利が上昇することで、利払いの負担が増え、設備投資に回す手元資金が減ってしまうという事象が起きています。
東京商工リサーチによると、2025年度の倒産件数は1万505件となり、2024年度に比べて3.55%増となっています。これは、2013年度以来12年ぶりの高水準です。倒産要因は、人手不足関連が442件で過去最高を記録しました。物価高倒産も801件であり、コロナ禍後の2022年度以降で最多件数となっています。
手形依存の資金繰りが見直され、売掛債権の活用が現実的な選択肢に
取適法によって手形払いは原則禁止とされました。また、支払期日を超える満期を設定した一括決済方式や電子記録債権などによる支払いであっても、支払サイトが長期に及ぶ場合には、支払遅延とみなされる可能性があります。こうした不適切な支払条件は取適法違反と判断され、勧告・指導・公表などの措置が取られることがあります。
こういったことから、売掛債権の早期資金化をどのように行えばよいかが、企業の経営者・財務担当者の課題となっています。
ファクタリングはどんな場面で使うべきか
ファクタリングは必ずしも万能な資金調達手段ではありません。財務状況や利用目的を見誤ると、逆にコストがかかってしまう場合があります。ここでは、ファクタリングの利用が有効であるケース、利用を見合わせたほうがよいケースを解説します。
売上は立っているのに、入金より先に支払いが来るとき
一般的な商取引では、売上は立っているものの、入金がされていないという状況が生まれます。そのため、売掛金の回収前に、仕入れや給与などの支払いが必要なときには、入出金のタイミングのズレを埋める手段として、ファクタリングは有効といえます。
融資実行まで時間がかかり、納税・賞与・仕入れの支払いが先に来るとき
金融機関からの融資による借入は、申請から入金まで一定の期間がかかるため、急に資金が必要になった場合には、調達が間に合わないというリスクがあります。たとえば、納税・賞与・仕入れ代金など支払期限が迫った支出に対して、短期の橋渡し資金の調達のためにファクタリングを利用することは有効です。
慢性的な赤字や資金不足の穴埋めには使い続けない
ファクタリングは、将来入金が予定されている売掛債権を、前倒しして現金化しているにすぎません。恒常的な赤字や採算悪化そのものを解決する手段でないことには注意が必要です。
また、ファクタリングを実施する際には、ファクタリング会社への手数料が発生します。手数料が高額であれば、かえって資金繰りが悪化してしまうリスクがあります。そのため、赤字の穴埋めに漫然とファクタリングを利用することは、控えたほうがよいでしょう。
ファクタリングを使う前に確認したい3項目
このように、ファクタリングを利用するか否かは、財務状況や資金調達の目的、調達額を総合的に判断して決めることが重要です。あわせて、ファクタリング利用後の「出口戦略」も事前に検討することで、ファクタリングは短期のつなぎ資金として位置づけられ、常用化を防ぎやすくなります。
次に、ファクタリングを利用するか否かを判断するための3つの確認ポイントを整理します。
(1)何の支払いを乗り切るためかを明確にする
資金調達では、「いくら調達するか」ではなく、「何のために調達するか」という利用目的が大切です。調達した資金が、一過的な用途のために利用されるのであれば、ファクタリングは有効な手段です。
一方、慢性的な赤字を補填することが目的である場合には、ファクタリングの利用はリスクが大きいため、避けたほうがよいでしょう。
(2)資金繰り表で「いつ・いくら足りないか」を見える化する
2つ目は、今後の資金予測です。具体的には、資金繰り表を利用して、将来にわたるキャッシュフローを把握し、資金がショートしてしまうタイミングや金額を確認します。
これらを正しく把握しておかないと、かえって無駄な資金調達コストが大きくなるというデメリットが生じてしまいます。
(3)融資・回収条件改善まで含めて「出口」を決める
ファクタリングは、恒常的な運転資金の調達のためではなく、融資実行までの暫定措置や、売上計上のタイミングと入金のタイミングのズレによる手元資金不足の解消といった、一過性の資金調達のために利用すると機能しやすくなります。
また、ファクタリング利用前に、「いつやめるか」を決めておけば、資金繰り改善と並行して、資金調達の「出口戦略」の設計も可能です。そうすることで、恒常的にファクタリングに依存せざるを得ない事態を回避できます。
融資とどう使い分けるべきか
資金調達の方法には、ファクタリング以外にも、金融機関からの融資・増資・社債発行といったさまざまな手段があります。それぞれの手段には、メリット・デメリットがあります。
そのため、財務状況や今後のキャッシュフローなどを踏まえて、最適な資金調達方法を選択することが重要です。
ファクタリングは短期のつなぎ、融資は中長期資金と整理する
借入か資産売却のどちらを選択すべきか、また中長期的か短期的かによって、もっとも資金調達の目的にふさわしい方法を整理します。
この整理を行う際、ファクタリングは短期の資金ギャップを埋めるための手段として考えます。一方、金融機関からの融資は設備投資や恒常的な運転資金を賄う手段として整理します。
資金使途が曖昧なまま相談すると、調達手段の選択を誤りやすい
銀行などの金融機関は、融資審査において「なぜお金が必要か」「必要額は妥当か」「返済財源は何か」といった点を重視します。
これらの項目が曖昧なままでは、融資かファクタリングかの調達方法や金額・時期などの判断を見誤りやすく、結果として資金調達コストが高くなりかねません。
支払サイト改善や借換の検討と並行して使う
企業の資金繰り改善においては、融資やファクタリングといった外部調達だけではなく、売上回収サイトの短縮・仕入支払サイトの延長・在庫圧縮といった内部改善も含めて、総合的に考えることが重要です。
ファクタリングは、あくまで資金調達における1つの手段にすぎません。支払条件の見直しや借換など他の資金調達策と並行して利用することで、資金繰りを抜本的に改善することが可能となります。
契約前に必ず確認したい注意点
ファクタリングは資金調達のために有効な手段の1つですが、ファクタリング会社の選択・契約内容の確認を見誤ると、資金繰りが改善しないばかりか、むしろ悪化するリスクがあります。
さらには、契約したファクタリング会社が登録のない違法業者であり、結果として実質的な違法貸付を利用してしまうリスクも考えられます。
次に、金融庁の注意喚起をベースに、ファクタリング契約を締結する前に、必ずチェックしておくべきポイントを整理します。
高額手数料や著しく低い買取代金は要注意
金融庁は、高額な手数料や大幅な割引率のファクタリング契約に注意を呼びかけています。こうした契約は資金調達コストが膨らみ、かえって資金繰りを悪化させ、多重債務に陥るおそれがあるためです。
そのため、ファクタリングを利用する際は、「早く資金化できる」という観点だけでファクタリング会社を選ぶのではなく、最終的に手元資金がいくら残るのかを確認して選択すべきです。
買戻し義務・自己資金弁済・ノンリコース条項の実態
ファクタリングとは、事業者が保有する売掛債権などを期日前に一定の手数料を徴収して買い取ってもらう債権の売買(債権譲渡)契約です。
ところが、売主が回収できなかった売掛債権を買い戻す義務や、自己資金で支払う義務を負わされるという、実質的な貸付けに該当する「偽装ファクタリング」が存在します。金融庁によると、貸金業登録を受けていない違法業者が、ファクタリングを装って貸付けを行っているケースが確認されているようです。
また、ファクタリング契約書に「ノンリコース」(売掛先が支払不能となった場合でも、売主に支払義務が生じない契約形態)が規定されていても、実態が貸金と判断されてしまうことがあるため、「誰が回収し、誰が最終的な支払リスクを負うのか」を確認する必要があります。
ファクタリング会社と売主の間に入り、ファクタリング会社に対して売掛金の回収を保証するサービスを行う企業を利用する方法もあります。そうした専門の企業と連携することで、売主に有利な条件で契約交渉を結ぶことが期待できます。
まとめ|ファクタリングは「場面」と「出口」を決めて使う
ファクタリングは、一過的な資金ギャップを埋めるためには有効な手段です。一方で、慢性的な赤字の穴埋めや出口が明確でない継続利用には向いていません。
ファクタリングを利用する際には、事前に「何のために使うのか」「いつやめるのか」を決めておき、資金繰り表や融資戦略と組み合わせて使うことが、賢い使い方といえるでしょう。



