事業性評価について

最近、中小企業の銀行借入の現場で、『事業性評価』という言葉を耳にします。

今回はこの『事業性評価』について、金融庁の考え方や金融庁の考え方を踏まえた地域金融機関の今後の動きについてまとめてみます。

 

平成26事務年度 金融モニタリング基本方針(平成26年9月11日公表)

まず、この『事業性評価』が注目されるようになったのは、平成26年9月11日に公表された金融モニタリング基本方針の中の重点施策「2.事業性評価に基づく融資等」という箇所です。

 

該当箇所を抜粋すると・・・

「金融取引・企業活動の国際化や、国内では高齢化や人口減少が進展する中において、日本の企業や産業が活力を保ち、経済を牽引することが重要である。地域経済においては、人手不足も見られる中、企業・産業の生産性向上を図ることが重要である。

このため、グローバルな競争環境の下で事業を展開する企業や産業が国際競争力を維持・強化するとともに、地域経済圏をベースとした企業や産業が、必要に応じ穏やかな集約化を図りつつ効率性や生産性を向上させ、地域における雇用や賃金の改善につながることが期待される。

こうした中、金融機関は、財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価し(「事業性評価」)、融資や助言を行い、企業や産業の成長を支援していくことが求められる。

また、中小企業に対しては、引き続き、きめ細かく対応し、円滑な資金供給等に努めていくことが求められている。

金融庁としては、この面での金融機関の経営姿勢、企業の事業性評価への取り組み、企業に対し現実にいかなる対応を行っているか等につき、検証を行っていく。」

ということですが、分かりにくいので、図で解説すると以下のもの(金融庁資料より)となります。

 

事業性評価検証の概念図

 

このように、3C分析(市場、競合、自社の事業特性)により、取引先の事業の優劣を見極めた上で、取引先の強みを強化または発掘できるような融資を積極的にやりましょう、ということです。

 

また、別の言葉で言えば「地域金融機関は、地域の主要な産業、中小企業を金融機関としてどのように関与し、支えていくのかということを常に考え、そのプロセスを明らかにして下さい」というのが金融庁が地域金融機関に求める事業性評価なのです。

 

具体的事例

この事業性評価にかかる具体的事例が平成26年10月24日に金融庁から公表された「地域金融機関による事業性評価について」に記載されています。

該当箇所について抜粋しますと・・・

借手企業の事業性に対する評価の検証結果

企業の競争力強化に資する事業再編やIT投資に提案を含め対応している案件が事例としてあがっています。

地域金融機関は「地域密着、お客様第一」等、経営方針に掲げていますが、特に中小企業金融において、具体的にどのようなプロセスを経て、地域経済を支えているのか、その姿勢を金融庁から強く問われてくるというのが今後の流れです。

 

今後の動きについて

金融庁はこのような基本方針を今後具体的にどのように運営していくのか。

具体的な動きが「銀行員.com」様の記事「地域の未来と事業性評価」
(対談 金融庁 検査局検査局長 遠藤 俊英 氏 × リッキービジネスソリューション株式会社 代表取締役 澁谷 耕一)に記載されています。

http://ginkouin.com/inter/bank2/index3.html

 

一部抜粋させて頂くと

『「総合的なヒアリング」は地銀全行が対象です。そのうち、およそ半数で「簡易な事業性評価」ヒアリングを実施することになるでしょう。繰り返しになりますが、事業性評価ヒアリングで検証したいのは、金融機関の態勢です。顧客企業のみならず業種・産業をどのようにサポートしていくのが地域経済に最も貢献するのかを組織をあげて検討し実践しているのかを見ていきたい。昨年公表したモニタリングレポートには、金融機関が、対象業種・産業の足腰を強くするために、中小顧客企業の緩やかな再編を促すなどの事例を記述しています。そうした取り組みを積み重ねることは、金融機関としての見識・知見、いわゆる「目利き力」をさらに高めることにも通じると思います。』

 

今後、地銀全行を対象に総合的ヒアリングを実施し、事業性評価を組織的にきちんと実施しているか、具体的な事例とともに確認していくという流れになっています。

 

この流れを踏まえた一例として、ネットに記載がある琉球銀行の事例を取り上げてみます。

(一般社団法人全国地方銀行協会HPより抜粋)

 

事業性評価シート
琉球銀行では、新規貸出、条件変更等の稟議起案時には全件添付することとし、平成27年度の行内の業績評価より、同シート作成件数を加点するとのこと。いわば、琉球銀行内部では半強制的に作成が行われていくものとなります。

 

気になる項目としては、冒頭にある「1.ライフステージ」という項目でしょうか。

 

金融モニタリング方針の中に、企業のライフステージ(イメージ)という図表がありますので、これを指すものと思われます。

ライフステージ

このライフステージ分類において対象企業が『衰退』に該当してしまうと

・円滑な退出支援

・抜本的な事業再生に向けた支援

といった厳しい対応を金融機関から求められるかもしれません。

 

地銀協が掲載している事例であるため、おそらく他の地域金融機関においても、このような評価シートが定着するのではないでしょうか。

 

この流れを踏まえた中小企業経営者の対応

この流れを中小企業経営者はどのように捉えるべきでしょうか。

 

まずプラスの面ですが、自社の強みを把握し、積極的に業容拡大を図りたいと考える中小企業経営者にとっては、融資を受けやすい環境になるでしょう。

特に自社を取り巻く外部環境や今後の計画を紙面にまとめることができる経営者は、資金調達をこれまで以上に有利に進めることができそうです。

 

逆にマイナス面ですが、条件変更(リスケ)を行っている企業や、業容の拡大が見込めず、厳しい環境下にある企業で、かつ、計画立案や環境を分析する力が弱い企業は、地域金融機関より他社とのM&A等による再編や廃業を促される可能性が強まります。

金融庁としても、地域企業の競争力強化のためには、企業の統廃合等、再編が不可欠であると考えており、「なぜこの企業を支援し続けるのか」という説明が今後地域金融機関に対し強く求められていくでしょう。

厳しい業績の企業は、「なぜこの会社が地域に必要なのか」真摯に考えていく必要が出てきます。

 

この流れには、プラス面、マイナス面がありますが、中小企業経営者の皆さまにおいては、まず、このような中小企業金融の潮流があるということをご理解頂いた上で、自社を取り巻く環境や強みを見直し、新しいチャレンジができるようであれば、取引のある金融機関に、その旨丁寧に説明してみて下さい。

以前よりも地域金融機関は、貴社の新たな取り組みに対し、前向きな融資を行ってくれるかもしれません。

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